2008年10月11日土曜日

伊藤忠で1,000億円規模の架空取引

ロイターなどによれば、伊藤忠商事は10日、モンゴルの資源会社へ建設機械や資材を販売した貿易取引で、1,000億円近い架空取引が行われていたと発表した、ということです。担当課長が懲戒解雇されたとあるので、横領か?と思いましたが、どうやら違ったようです。詳細は伊藤忠商事株式会社の公式発表(http://www.itochu.co.jp/main/news/2008/pdf/news_081010.pdf)を読んでいただくとして、ここではその内容を検討してみたいと思います。

取引は、モンゴルやロシアなど複数の仕入先から重機械や資材等を購入し、モンゴルの得意先へ販売するもので、商品は直接陸送されていたということです。このような取引は、いわゆる三国間取引と呼ばれるものなのですが、こういうふうにサラッと書くと、その資源会社が直接買えばいいのに、なぜ伊藤忠が間に入っているの?という疑問が湧くのではないかと思います。ひとことで言えば、商社とはそういうもんだ、ということになるのですが。。。何の説明にもなっていませんね。。。

こういった、中間に商社が入って口銭を抜く商売は昔からあります。もともとは、複数の売り手と買い手をつなぐ、いわば商品取引所に似た機能を果たす目的で発生してきたものだと思いますが、今となっては「昔からこうだから」というだけで、意味もなく続いている取引がたくさんあるのではないかと思います。
もう一つは、与信の問題があります。買い手の与信に不安がある場合、その間に立って商社がリスクをとるわけです。そのリスクプレミアムが口銭というわけです。
さらにもう一つ、金融機能もあります。売り手と買い手の代金決済サイトが折り合わないとき、商社が間に立ってこれを調整するわけです。この場合、口銭は利息と同様に考えることができるわけです。
こうしてみると、商社が売上と仕入を両建てで計上している理屈はどこを見ても成り立たない気がしますが、その話はまた別の機会に。

だいぶ脱線しました。で、クビになった担当課長は何をやったのか、というと、カラ仕入とカラ売りです。商品の受け渡しはなかったにもかかわらず、仕入先から仕入したものとして支払いを起こし、その資金を得意先に迂回させた、ということのようです。最初は真っ当に商売をしていたのですが、得意先が資金難に陥って支払いが滞るようになってきてしまった。そこで、得意先を一時的に支援して、取引を継続してもらおう、そういう意図のようで、報道によれば元課長は、「取引を広めようと便宜を図った」と言っているようなのです。この売上に見せかけた貸付は、実に8年間にわたって行われ、貸付総額は1,000億円近くに上るとのことです。

得意先の状況が思わしくなくなってきて、代金回収が滞りはじめたとき、これを焦げ付きとして処理したくないために融資するというのは、よくある話です。典型的な不正への陥穽という気がします。でも、なにやらどうも、腑に落ちない感じがします。さて。。。

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