2009年4月19日日曜日

何が重要?何が重要でない?

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西松建設の事件は政界にまで及んで、次は俺の番かと戦々恐々としている政治家の先生方がおられるかもしれません。それはともかくこの事件は、大筋として経営者不正であるという結論を、今の段階で下してよいのだろうと思います(裁判はこれからなので、最終的にどんな判決となるかはわかりません)。

さて、経営者不正となれば、当然内部統制報告制度との関連が議論されることになります。そしてすでにいろんなところで議論されており、これも大筋、内部統制上の「重要な欠陥」に該当するであろうという論調が主流になっています。

これらの議論は、こうした経営者不正は内部統制の限界を超えたものか否か、という命題そのものを議論する形を取るものが多く、内部統制の限界を超えたものとなれば重要な欠陥とする余地はなく、内部統制の限界を超えたものではないとなれば重要な欠陥として取り扱われる、といった感じです。

一方、実務的には、経営者不正が識別されれば、その状況を内部統制の不備として認識し、それが重要な欠陥に該当するかどうかを検討することとされていますので、経営者不正は内部統制の限界を超えるものであるから重要な欠陥とする余地がない、というふうに逃げるわけにはいきません。なので、経営者不正を防ぐことができなかったことが重要な欠陥ではないと判断されたとすれば、それはその重要性が低いと判断されたということになります。つまり重要な欠陥かどうかの判断は、財務諸表に与える影響の程度が重要か重要でないか、に帰着します。

で、結局どの議論も、西松建設の件を重要な欠陥と判断する理由が今ひとつ不明確なのですね。なんとなく、これを重要と言わずして何を重要と言うのか?という雰囲気が一人歩きしている印象です。しかし、監査上、実際に内部統制に不備があると識別されたとき、それが「重要な欠陥」に該当するかどうかは、専ら重要性の基準値により判断されるべきであり、部外者がそう簡単に判断すべきではありません。

であればこそ、個々の内部統制の不備の重要性を、できるだけ定量的に判断できるような仕組み作りがないと、現場の会計士たちは右往左往することになるでしょう。そして実際、何をもって重要と言うのか、という判断は、現場の監査チームに任され、ケースバイケースの個別対応を余儀なくされています。現場作業の肥大化と混乱は、まさにこの一点にあるわけです。

この件に関しては、別の機会にもう少し突っ込んでみたいと思います。

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2009年4月5日日曜日

なんだか騒ぎすぎのような気がします

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昨日今日の出来事は、危機管理という言葉を想起させますね。報道では、だらしがない、何やってるんだ政府は自衛隊は自治体は、いった論調で、とにかく貶すばかりです。でも結局、貶すだけでどうすればいいのか、国民はどう対応しどう行動すればいいのか、という話をしてくれません。もっとも、それは報道の責任ではなくて、政府の責任なのでしょうけど。

とあるニュースでは、あの誤報の原因はヒューマン・エラーであると分析していました。軍事評論家と思しき人物が、これを評して情けないといったような言いかたをしていましたが、私としては、この日本という国でこういうことが起こったら、みんなが慌てふためくのも仕方のないことなのではないかな、と思うのです。簡単に言ってしまえば経験不足です。とはいえ、過去の経験による慣れや蓄積を期待するわけにはいきませんから、月並みですがやっぱり訓練不足ということなのでしょう。

危機管理については門外漢ですし、その知識もほとんどありませんから、いわば思いつきで言いますと、通常、コンティンジェンシー・プランなるものを作成して用意し、これを定期的に訓練するしか手立てはないように思います。いわゆる日常のリスクと違って、災害や戦争などが生じる可能性それ自体をコントロールすることはできないので、専らそれらが起こってしまったらどうするか、を考えるしかありませんし、またそれに対応する能力の向上も、繰り返し訓練するしかないのでしょう。

企業における危機管理についても、日ごろの訓練が絶対必要であり、重視すべきなのではないかと感じます。防災の日に避難訓練するだけでは全然ダメ、ということを思い知らされた週末でした。

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