2008年12月2日火曜日

一時会計監査人の功罪

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株式会社ランドの件は、結局なにごとも起こらず、短信と全く同じ半期報告書が公表されて終わりました。実際のところどうだったのか、というのは、会社による棚卸資産の時価算定方法が全く開示されていないので判断しようがないのですが、感心したのはそれよりも、あの短期間で監査報告書を出してしまうウィング・パートナーズ監査法人の勇気です。私はあの監査報告書には絶対にサインしたくありません。もちろん、それは期間的な問題だけを言っているだけですので誤解しませんように。

さて、今回の件は、ふたつの問題点を含んでいます。ひとつは、上記に前述のような監査スケジュールの問題。もうひとつは、会計上の見積りの問題。いずれも当然にありうる話ですので悩ましい問題です。

以前は、期中に監査人が交替する、なんて、ありえない話でした。たとえば、この業界の人間なら記憶に新しい(わけでもない?)赤井電気の件。監査人の監査が未了ということで、財務諸表に関する株主総会の議案を報告から承認としたものですが、今ならどこか別の監査法人ないし公認会計士を一時監査人として任命し、無理やりにでも監査報告書を出してもらっていたことでしょう。

この、一時監査人の制度は、中央青山監査法人が業務停止となった際に一躍有名となったものですが、今ではこれが、会社に、そして監査法人にいいように使われてしまっているのではないか、という感触です。監査法人としては、厳格監査(この言葉は大嫌いなのですが)をタテにとって、これを修正しなければ降りるぞ、と、半ば脅しをかける一方、会社側も、一時監査人の制度があるため、とりあえず監査人をやってくれる監査法人や個人事務所があれば、本当に監査人を代えてしまう、という体たらくなのです。

監査には批判的機能と指導的機能があると論じられますが、日本の監査の特徴は指導的機能を発揮して、クライアントを説得し軌道修正することだったのではないでしょうか。それがいまや、言うことを聞かないクライアントは情け容赦なく切る、そして会社側は、自分たちの主張を聞いてくれそうな監査人を選ぶという、いわばオピニオンショッピングのようなことをやっている、そんなのが監査といえるのでしょうか。

監査人はもう一度、指導的機能とは何ぞや、ということを真剣に考えてほしい、と思う今日この頃です。

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