2008年11月3日月曜日

危ない社債の評価額

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有価証券の話題をもう一つ。昔話です。

もうだいぶ前の話になりましたが、日経新聞で社債の市場価格をなんとなく眺めていたところ、70円台の数字が目に飛び込んできました。

銘柄を見れば「マイカル」。あ?何だこれ?「償還されれば」確実に儲かるじゃんw買うか?と、冗談半分に同僚と話したことがありました。世間では危ないと噂されていましたが、これは本当にヤバイ状況なのだな、と感じたものでした。その数ヶ月後、マイカルは本当に民事再生法の適用を申請することとなり、ああ本当に潰れた、あの価格は嘘ではなかったのだな、と、改めて思ったものです。

当時は金融商品会計基準の適用が開始されたばかりで、有価証券の減損に関する原稿を書く機会がありました。実務指針の本文を読むと、「個々の銘柄の有価証券の時価の下落率がおおむね30%未満の場合には、一般的には『著しく下落した』ときに該当しないものと考えられる。」とあります。

で、脳裏に浮かんだのが、マイカル社債でした。倒産直前の市場価格が70円以上あったわけですから、下落率は30%未満です。すると、この規定を杓子定規に当てはめると、減損不要になってしまいます。それはおかしい。そもそも、変なオプションやその他付属品がついていない普通の社債なら、そんなに価格変動するわけがありません。80円台に突入したら何かあるといわざるを得ません。ですが、実務指針では、減損を検討すべき価格のボーダーラインについて有価証券をひと括りにして説明しており、債券の取り扱いが分離されていません。

もっとも、減損の検討を行うボーダーラインの設定は、会社が独自ルールを設けることは可能です。しかし、保有社債発行会社のゴーイング・コンサーンに疑義が生じたとして、単価10円20円の減損を認識したところで何が面白いのか?そもそも、ゴーイング・コンサーンに疑義があるなら、社債を債権として評価すべきではないか、という考え方もあります。

しかし、債券を債権として評価してよいのは、当該債券に時価がない場合です。で、市場価格を時価とみなせない場合とは、市場そのものが成立していない場合に限られ、債券発行会社の信用状況が悪化したとき、という条件はありません。また、債権として評価したところで、上場廃止や監理ポスト入り等の措置がなされていない状況であれば、市場価格を覆すだけの根拠がある評価額を導き出せるのか、という疑問もあります。

以上から、結局は市場価格を時価として付す以外はなく、せいぜいP/Lチャージする程度になるだろう、ということで、その原稿には、会社独自の減損検討ルールを設定し、債券に関しては他の有価証券より厳しいラインとすることも考えられる、といった程度の文章にしたような記憶があります。

さて、その当時、マイカルの社債はデフォルトとなって一般ニュースにも頻繁に採り上げられるほど大騒ぎになりましたが、こうした上場社債の会計上の評価額というのは、どのような額を付すべきなのか、非常に難しいと思います。これも、金融に詳しい方にとっては、基本なのでしょうか。

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