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前回ご説明しました、「モノがほしい立場の人が、モノを供給してくれる人に向かって、『明日までに○○を100個ほしい』と要求し、要求されたほうは、その要求があってから作り始める」の部分、ご察しの良い方なら、これはかんばん方式の説明だ、と、ピンときたことと思います。確かにこれなら在庫をゼロにすることだって可能です。ですが、在庫を減らすとどんなご利益があるのか?
通常、在庫を減らすとキャッシュが増える、と説明されます。それはキャッシュ・フロー計算書で、在庫の減少は営業キャッシュ・フローのプラスとして表現されることからもわかりますね。その実態は、ちょっと考えれば納得できると思います。在庫を仕入れると、その代金を支払わなければならないのですから、在庫が増えればキャッシュが減るのがわかると思います。逆に、在庫が減れば(つまり売れれば)収入となりいずれ入金されるのですからキャッシュが増えるのがわかると思います。
つまり、資金繰りが楽になるというわけで、これだけでも在庫減らし運動をやってみようかという気になるというところですが、これがなんと財務会計的には利益が減少してしまう可能性が高いのですね。なぜかというと、通常、モノを大量に一括して買えば安くなるところを、必要に応じてその度に細切れに買うことになるため、仕入単価が上昇するかもしれないのです。そうすると粗利が低下します。また、製造業では、在庫を減らすということは、売れた在庫に比べて残った在庫の割合が小さくなるわけですから、売上原価に配賦される製造間接費が相対的に大きくなって、やっぱり粗利が低下するというからくりです。
こういうことが現実として突きつけられると、損益で業績評価を受ける立場の人たちは、在庫減らしを躊躇することになります。在庫は少ないほうがいいことはわかっていても、結果として在庫を増やすような意思決定を選択する可能性が高いのです。こういう人たちをどうやって説得すればいいのでしょうか。
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「日経ビジネス」(2025/11/17号) 『物言う社外取締役』特集
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「日経ビジネス」(2025/11/17号)は、『物言う社外取締役』特集です。
曙ブレーキや小林製薬の社外取締役だった伊藤邦雄氏へのインタビュー記事『伊藤邦雄氏が漏らした「後悔の念」』が掲載されています。
「取締役会の議論は活発で、何か隠し事をするような雰囲気はなか...
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