2008年12月31日水曜日

粉飾は犯罪です

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さて、今年も今日で最後です。今年の締めは適当に雑文でも書いてお茶を濁そうかと思ったのですが(かといって普段の文章が雑文でなくて何なのかという気もしないでもありませんが)、出張&プライベートの旅行から帰ってきてみれば、ビックカメラが過年度の財務諸表を修正するという話が。この年末の押し迫った時期に何してんのかね、とも思うのですが、去年までは中間決算の監査報告書が出る時期で、何かがあったときにここで直しておかないと期末でいじれないということも出てくるので、仕方がないといえば仕方がないのですね。そういえばこのあたり、四半期になってどうなったのですかね。1Qに対応しなかったから継続性云々の話になるのは、実務上時間がなさ過ぎると思うのですが。。。

ところでこのブログ、なんとなく何かを言いたくなってはじめたわけですが、自分でも何が言いたいのかよくわかっていませんwただ、会計ってのは会計そのものが物事の本質たり得ないのに、みんな、なぜそんなに会計にこだわるのか、それが不思議だったのですね。というのは、会計上の数字をいくらいじくったところで、いかに操作したところで、起こった事実は曲げようがないわけです。なのになぜこうして、明らかに意図的な「正しくない会計処理」が後を絶たないのでしょう。

逆に考えれば、これだけ数字をいじりたくなる人がたくさん出てくるということは、いじった結果がそれだけ何らかの効果を発揮しているはずです。それはおそらく、未来に対する影響力なのですね。そして、それが未来に対して影響力を持つためには、情報の非対称性が前提になるわけです。つまり、知らぬは投資家ばかりなり、という状況があって初めて、未来に対して影響力を持つことになります。だからこそ、監査、という制度が必要なのですね(その制度設計の是非はともかく)。

それにしてもこれ、恐ろしい話だと思いませんか?すでに生じた事実は変えられないのに、会計上の数字をいじれば、未来が変化するんですよ。だから、自分だけに都合のよいように数字をいじって資金を集めれば、それは詐欺的な犯罪行為ということになります。ビックカメラの公募増資は、まさにそういうことなんですね。犯罪と言って語弊があるなら、非道徳的とでも言っておきましょうか。本人たちに「その気はなかった」という言い訳を与えるような話ではなく、結果的にそうなったことを重視すべきであろうと思います。

それならなぜ会計処理に選択肢があるのか、選択肢など認めず、だれでもどんな状況でも同じ結果となるように会計基準を決めてしまえばいいではないか、という発想を抱く人も出てくるかと思われます。でも、それは勘違いなのです。もともと会計処理に選択肢など存在しないのです。

あの人種(自分もその一人?)は、よく「経済的実態」という言葉を使います。結局、この取引は何なの?という類型化をしてるんですね。実は、この類型化が大切で、その結果によって会計処理が一意に決まるのです。なのでそもそも、会計処理に選択肢があるという感覚はあまりありません。選択肢というと、先入先出し法か平均法か、といった選択を思い浮かべるかもしれませんが、そういう話とは次元が違います。

というわけで、たとえば、「このSPCは連結の範囲に含まれるか?」という命題は、会計処理の選択の話ではなく、経済的実態の解釈の話なのです。そして、経済的実態とは、当然ながら取引の当事者の意図が反映されたものですから、会社側が、その経済的実態を見誤ることなどありえない話です(もしそんな経営者だったら、その会社はあっという間に倒産ですね)。そういう意味で、世の中の粉飾決算というものは、まず間違いなく、すべて意図的なのです。重大犯罪なのです。

では、不正な会計処理を防ぐにはどうしたらいいでしょうか、という話になるのですが、それはやっぱり、そういうことをしたら結局は損をするという認識を地道に広めるしかないのでしょうね。内部統制はめんどくさいですけどね。。。

来年はおそらく、会計の仕事に就いている人たちに対して、いろんな方向からいろんな圧力がかかる年になりそうな気がします。その圧力に流されないように仕事したいものです。

それでは、お読みいただいている方々、ありがとうございました。書きたいことはたくさんあるのですが、文章を書くというのは、そこそこの時間と労力がかかるものです。ほぼ毎日のように更新されているブログもありますが、すごいパワーだな、といつも感心しています。いつまで続くかわかりませんが、来年もよろしくお願いします。皆様よいお年をお迎えください。

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2008年12月20日土曜日

内定取り消し!?

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この1ヶ月、ずっと予算を作っていて、いろいろと予算について考えました。管理会計の分野でも思うところがあるので、例によって思いつきベースでポツポツと書くつもりです。。。と予告すると、いつも頓挫しますね。長い目で見てください。あんまり頑張りすぎると長続きしませんから。。。

世間はこの騒ぎですから、来期の予算は惨憺たる数字が営業サイドから上がってきます。人間の心理として当然ですが、収益は低めに、費用は高めに数字を出すものです。売上が目標に達しなければ「なんでやねん」と言われますし、予算を超える経費を使いたいと言い出せば、またこれも「なんでやねん」と言われます。だから単純に数字を積み上げただけの予算が、最初から目標利益を上回ることは稀です。

そういう意味では毎年同じで、営業サイドにはもっと積み増せと迫る一方、こちら側(コスト発生部門)ではどこか削れと迫られるわけです。それでまあ、どのへんをどのくらい削りましょうか、という話になるのですが、どうしても金額が大きいところが削減対象になります。

で、何がいちばん大きい経費か、と言えば、それはある意味どこの会社でも似たり寄ったりでしょうが。。。そう、人件費なのですね。とはいえ、最初から人件費に「手をかける」のは、やはり人間として気が引けるようで、最初は旅費交通費とか、交際費とか、業務委託費とか、そのあたりを減らすわけですが、それでも足りなきゃ設備投資、そして最後に人件費、となるわけです。

そんなわけで、どのくらい減らせるのか、というわけで、総務に相談しに行きました。
「予算上でさ、来年の増員計画を全部やめたら、どのくらい減るの?」
「これが営業から上がってきてる増員計画の一覧ですけど。。。このくらいですかね。」
「ふーん。とりあえず現状維持じゃー!と号令をかければこれだけ減るのね。。。」
「いや、この部分は来年の新人ですから。」
「そうかあ。もう内定出してるもんなあ。」

そこでハッとしました。
なるほど。そうか。世間ではこうやって新人の内定取り消しが頻発してるんだな。。。からくりがわかったような気がして妙に納得してしまいました。とはいえ、さすがにそこに手を付ける、というのは、人として、最後の手段という気がします。その、最後の手段と思われるところに手を付ける企業が、本当に断腸の思いで手を付けたのか、それともすでに最後の手段ではなくなってしまっているか、それはわかりませんが。。。

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2008年12月14日日曜日

監査手続今昔

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私が勤務している会社にも、11月の半ばからぽつぽつと会計監査のスケジュールが入ってきました。まあ、基本的には要求された資料を渡して勝手に見てもらって、質問されたら答えて、それでおしまいですから対応としては何も難しい話はありません。私の素性は先方にばれていますので、お互い、説明半分でも話が通じるのでラクなのですが、そこはちょっとした思い込みや齟齬がないかどうか気を付ける必要はあります。

ところで、今回は、監査手続上、債権債務の残高確認を決算日以外の日で行うことになりました。決算日を基準日にして確認状を送って、差異調整の結果として修正仕訳を入れなければならなくなったとしても、決算報告の締め切りに間に合わないからです。ま、このとこ自体はよくある話で、いまどき債権債務の確認状の基準日を決算日にしているほうが珍しかったりするので、どうということはないのですが、これに関連して、監査人が、仕入売上取引の実在性を確かめる手続きを行う必要があると言い出したのです。

監査上、B/S項目の監査は、その日の残高がいくらなのかを直接把握することができるためわかりやすいのですが、P/L項目の監査は、要するに1年分の取引の集積となるため、一発でその金額を把握する方法がありません。なのでこの場合、その勘定科目に関連する取引の把握方法や、金額集計に関連する内部統制がどの程度の信頼性があるかを確かめ、その信頼性の程度に応じて、期中からコツコツと取引をサンプリングしつつ見ていくしかありません。

その中でも売上や仕入取引は、通常、会社の根幹となる取引ですから、システムでガッチリ押さえ込まれていることが普通で、内部統制の信頼性もそこそこ高いものです。ですから、通常は、システムの信頼性を確かめつつ、内部統制テストをやっておけば期中監査は終わりで、期末にはカットオフ・テスト(注1)や確認状のロールフォワード(注2)をやっておしまい、という流れになります。

ところが、監査人は、ウチの監査マニュアルでは、債権債務の確認状を決算日以外の日を基準日とした場合には、売上仕入取引の実在性テストをしなければならないことになっている、というのです。つまり、仕入や売上の取引をサンプリングして、その取引の実在性を確かめるということです。

ちょっと待って。それってものすごい件数をこなさなきゃいかんのではないの?と私が言うと、まあそういうことなんです、これを1~2日程度でいっぺんにやってしまいたいんです、資料集められますか?という感じで申し訳なさそうに頼んできたわけです。厳しいねえ。ウチの内部統制レベルってそんなに低いかなあ。昔はそんな依頼をしたらクライアントに怒られる、とか言ってたもんだけどねえ。時代は変わったなあ。

その昔、私は学校法人の監査をいくつか担当していたのですが、通常の事業会社の監査日程と違い、毎月数日(2~3人で2日前後)ずつ行くような感じで日程を組んでいました。もちろんそれは、制度上の制約があるというわけではなく、むしろ監査チームの昔からの慣習といった感が強く、学校側も、監査人は毎月定期的に来るものだという認識ができあがっていたことから、これを変えずに続けていたのだろうと思います。

比較的余裕のある時期ならいいのですが、中間監査などの忙しい時期に、1日だけ学校法人の日程が入っていたりするとウザイと思ったものですが(学校法人の方すみません!)、今にして思えば、月次決算が締まった頃にあわせて、毎月クライアントに出かけていって中身を見る、というこの方法、取引記録の実在性を確かめるためにサンプル数を増やすにはいちばんいい方法だったのではないかな、と思うのです。実際、期中は取引記録を見る監査手続が中心で、期末前になるとその調書が結構な分厚さで溜まります(それだけで仕事した気分になってはいかんのですけど)。

自分もそうですが、なんとなく、今の監査手続が先進的で、昔の監査手法はフィーリングだけでやってた、といったような印象を持っている監査スタッフが多いのではないかと思います。でも、昔の手法も、振り返ってみれば意味のあることをやっていたわけで、無碍に切り捨てるのはもったいないような気がします。


(注1)決算日を境にして、計上漏れや前倒し計上がないかどうかをチェックする手続。
(注2)残高確認の基準日を決算日より前の日で実施した場合、その基準日から決算日までの残高の動きを追いかけ、期末日の残高の信頼性を確認する手続。

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2008年12月2日火曜日

一時会計監査人の功罪

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株式会社ランドの件は、結局なにごとも起こらず、短信と全く同じ半期報告書が公表されて終わりました。実際のところどうだったのか、というのは、会社による棚卸資産の時価算定方法が全く開示されていないので判断しようがないのですが、感心したのはそれよりも、あの短期間で監査報告書を出してしまうウィング・パートナーズ監査法人の勇気です。私はあの監査報告書には絶対にサインしたくありません。もちろん、それは期間的な問題だけを言っているだけですので誤解しませんように。

さて、今回の件は、ふたつの問題点を含んでいます。ひとつは、上記に前述のような監査スケジュールの問題。もうひとつは、会計上の見積りの問題。いずれも当然にありうる話ですので悩ましい問題です。

以前は、期中に監査人が交替する、なんて、ありえない話でした。たとえば、この業界の人間なら記憶に新しい(わけでもない?)赤井電気の件。監査人の監査が未了ということで、財務諸表に関する株主総会の議案を報告から承認としたものですが、今ならどこか別の監査法人ないし公認会計士を一時監査人として任命し、無理やりにでも監査報告書を出してもらっていたことでしょう。

この、一時監査人の制度は、中央青山監査法人が業務停止となった際に一躍有名となったものですが、今ではこれが、会社に、そして監査法人にいいように使われてしまっているのではないか、という感触です。監査法人としては、厳格監査(この言葉は大嫌いなのですが)をタテにとって、これを修正しなければ降りるぞ、と、半ば脅しをかける一方、会社側も、一時監査人の制度があるため、とりあえず監査人をやってくれる監査法人や個人事務所があれば、本当に監査人を代えてしまう、という体たらくなのです。

監査には批判的機能と指導的機能があると論じられますが、日本の監査の特徴は指導的機能を発揮して、クライアントを説得し軌道修正することだったのではないでしょうか。それがいまや、言うことを聞かないクライアントは情け容赦なく切る、そして会社側は、自分たちの主張を聞いてくれそうな監査人を選ぶという、いわばオピニオンショッピングのようなことをやっている、そんなのが監査といえるのでしょうか。

監査人はもう一度、指導的機能とは何ぞや、ということを真剣に考えてほしい、と思う今日この頃です。

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