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西松建設の事件は政界にまで及んで、次は俺の番かと戦々恐々としている政治家の先生方がおられるかもしれません。それはともかくこの事件は、大筋として経営者不正であるという結論を、今の段階で下してよいのだろうと思います(裁判はこれからなので、最終的にどんな判決となるかはわかりません)。
さて、経営者不正となれば、当然内部統制報告制度との関連が議論されることになります。そしてすでにいろんなところで議論されており、これも大筋、内部統制上の「重要な欠陥」に該当するであろうという論調が主流になっています。
これらの議論は、こうした経営者不正は内部統制の限界を超えたものか否か、という命題そのものを議論する形を取るものが多く、内部統制の限界を超えたものとなれば重要な欠陥とする余地はなく、内部統制の限界を超えたものではないとなれば重要な欠陥として取り扱われる、といった感じです。
一方、実務的には、経営者不正が識別されれば、その状況を内部統制の不備として認識し、それが重要な欠陥に該当するかどうかを検討することとされていますので、経営者不正は内部統制の限界を超えるものであるから重要な欠陥とする余地がない、というふうに逃げるわけにはいきません。なので、経営者不正を防ぐことができなかったことが重要な欠陥ではないと判断されたとすれば、それはその重要性が低いと判断されたということになります。つまり重要な欠陥かどうかの判断は、財務諸表に与える影響の程度が重要か重要でないか、に帰着します。
で、結局どの議論も、西松建設の件を重要な欠陥と判断する理由が今ひとつ不明確なのですね。なんとなく、これを重要と言わずして何を重要と言うのか?という雰囲気が一人歩きしている印象です。しかし、監査上、実際に内部統制に不備があると識別されたとき、それが「重要な欠陥」に該当するかどうかは、専ら重要性の基準値により判断されるべきであり、部外者がそう簡単に判断すべきではありません。
であればこそ、個々の内部統制の不備の重要性を、できるだけ定量的に判断できるような仕組み作りがないと、現場の会計士たちは右往左往することになるでしょう。そして実際、何をもって重要と言うのか、という判断は、現場の監査チームに任され、ケースバイケースの個別対応を余儀なくされています。現場作業の肥大化と混乱は、まさにこの一点にあるわけです。
この件に関しては、別の機会にもう少し突っ込んでみたいと思います。
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